魅力・ビジネス・文化を育む『秋葉原ウォーカブルビジョン』公開
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一般社団法人ソトノバは、2023年度より秋葉原タウンマネジメント株式会社（以下、秋葉原TMO）、日本大学理工学部建築学科都市計画研究室（泉山ゼミ）（以下、泉山ゼミ）と共に、秋葉原にて居心地が良く歩いて楽しいウォーカブルなまちづくりを進めています。
秋葉原TMOが、秋葉原のウォーカブルビジョンを策定するにあたり、ソトノバは制作支援を担当しました。そしてこの度、『秋葉原ウォーカブルビジョン｜アキバに出会う、アキバと歩む。』として、2025年2月に冊子を公開しました。
Contents
制作の背景
秋葉原は電気街やアニメ、ゲーム、フィギュアなどのサブカルチャーが集まる街として国内外から注目されています。そのまちの魅力を支えているのは、地域の人々による日々の維持・管理や活動です。
なかでも秋葉原TMOは、エリアマネジメント組織として大規模開発後のまちを維持し、さらに発展させるために、地域の人々と協力し、多岐にわたる業務を担っています。
ソトノバは、秋葉原のウォーカブルなまちづくりを推進するために、2023年より秋葉原TMOと連携体制をとっており、秋葉原TMOの活動を紹介する冊子『アキバに出会う、アキバと歩む。』を2023年8月に作成しました。
「秋葉原TMOのパーパス」アキバに出会う、アキバと歩む。P.3-4掲載
千代田区は2022年に千代田区ウォーカブルまちづくりデザイン、2023年に千代田区エリアマネジメント活動推進ガイドラインを策定し、QOL（Quality of life）の向上や地域の愛着、つながりを強化する方針を示しました。
一方で秋葉原では、違法な客引きなど治安面の課題や、外国人観光客の増加に伴うインバウンド対応の必要性、細街路への荷捌き車両の侵入等が指摘されています。
細街路への荷捌き車両の侵入
まず、2022年に秋葉原地区の基礎調査を秋葉原タウンマネジメントと泉山ゼミが主導して実施しました。その後、2023年に秋葉原タウンマネジメントと泉山ゼミ、ソトノバが協働で「プレイス・ワークショップ秋葉原」の実施、Link and Place理論（交通と人との滞留空間という２つ軸から検討した道路計画・設計のアプローチ方法）を用いた調査を行いました。
「プレイス・ワークショップ秋葉原」では、ステークホルダーや秋葉原に関心のある方が参加し、秋葉原地区にあるパブリックスペース（8 箇所）を対象にまちを歩き、空間を評価＆議論しながら各パブリックスペースにおける具体的なアクション（短期・長期）をとりまとめました。
プレイスワークショップで空間を評価する様子
2024 年10 月には、秋葉原地区内のジャンク通りを対象に、歩行者空間化、滞留空間等を創出すると同時に、住友不動産秋葉原ビルにおける公開空地を活用する社会実験（マーケットストリート 社会実験2024 in 秋葉原ジャンク通り）を実施しました。歩行者空間化によるストリートの変化を、動画でまとめました。こちらからご覧ください。
社会実験（マーケットストリート 社会実験2024 in 秋葉原ジャンク通り）の実施の様子
こうした課題に、より具体的に対応するために、秋葉原TMOは誰もが安心して居心地が良く歩きたくなるまちを目指す秋葉原ウォーカブルビジョン｜アキバに出会う、アキバと歩む。を策定しました。
秋葉原ウォーカブルビジョンの概要
秋葉原ウォーカブルビジョン｜アキバに出会う、アキバと歩む。
編集発行：秋葉原タウンマネジメント株式会社
制作協力：一般社団法人ソトノバ、日本大学理工学部建築学科都市計画研究室（泉山ゼミ）
発行年月：2025年2月
目次
| １章 はじめに 1-1 背景・目的 1-2 「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の必要性と期待 1-3 ウォーカブルなまちづくりとは 1-4 ウォーカブルなまちづくりの形成手法 ２章 現状と課題・潜在力 2-1 広域的な視点からみた秋葉原地区の概況・課題 2-2 秋葉原地区を取り巻く概況・課題 2-3 ステークホルダー等からの意見・課題 2-4 秋葉原地区内のパブリックスペースの現況・課題 2-5 課題を受けたウォーカブルなまちづくり推進の考え方 ３章 全体方針 3-1 全体方針 3-2 ウォーカブルなまちづくのシナリオ 3-3 方針①｜ウォーカブルな都市構造の形成方針 3-4 方針②｜ウォーカブルなまちの構成要素別方針 3-5 方針③｜ターゲット分類のエリア別方針 ４章 ウォーカブルプロジェクト 4-1 ウォーカブルプロジェクト 4-2 リーディングプロジェクト 4-3 ロードマップ ５章 推進体制 ６章 施策に関係する制度一覧 |
秋葉原ウォーカブルビジョン（本編）
秋葉原ウォーカブルビジョン（本編）秋葉原ウォーカブルビジョン（概要版）
秋葉原ウォーカブルビジョン（概要版）秋葉原ウォーカブルビジョンのポイント
１～２章｜現状と課題・潜在力
本誌は、１章、２章にて、パブリックスペースの潜在力を分析することで、秋葉原でウォーカブルのまちづくりを進めるうえで重要となる考え方を示しました。
下記に一部抜粋いたします。
2023年の基礎調査結果と現状の街路特性をもとに、Link and Place理論で街路ネットワークの評価と方針の立案を行いました。街路特性に応じて交通機能と滞留機能を評価し、街路の充実を図ることを重要な考え方として示しました。
「Link &Placeでの街路ネットワーク」秋葉原ウォーカブルビジョン（本編）P.25-26
さらに、バルセロナのスーパーブロック・プロジェクト（3×3 の9 ブロック（おおよそ400×400 ｍ）を1 つの大きなブロック（スーパーブロック）としてブロック内で歩行者を優先させる取組）から、交通計画を整理した秋葉原ブロックモデルを示すことで、都市構造から交通計画を整理し、歩行者回遊性を向上させる考え方を示しました。
「秋葉原の実情に合わせたブロック検討（左ページ）」秋葉原ウォーカブルビジョン（本編）P.27-28
３章｜全体方針
続いて３章では、秋葉原ウォーカブルビジョンの軸となる全体方針を示しました。
20年後を見据えてウォーカブルなまちづくりのシナリオを描き、約5年ごとに区切ってまちの変化の将来像を示しました。
また、全体方針に紐づいた３つの方針（都市構造の形成方針／まちの構成要素別方針／ターゲット分類のエリア別方針）を立て、秋葉原の文化・魅力・ビジネスを向上させるような出会いを育むことを目指します。
「全体方針」秋葉原ウォーカブルビジョン（本編）P.29-30
４～６章｜ウォーカブルプロジェクトとリーディングプロジェクト
４章、５章、６章では、実現に向けた具体的な取り組みと体制を示しました。
本誌ではビジョンを示すだけではなく、実現に向けた具体的な取り組みをウォーカブルプロジェクトと呼称し、ターゲットや方針、時間軸と共に２８の施策にしました。
ウォーカブルプロジェクトでは、施策ごとにターゲット、方針種別、実施時期を設定しており、施策を実施することによりもたらされる効果を明確にし、優先度を検討できるように調整しています。
この施策により、地元企業・住民が参加するイベントの増加、交通規制及び通行・滞留の区画計画による店舗の滲みだし（アキバレガシーの継承）、多様な観光エリアへ誘導するサイン計画による来街者の回遊促進、といった秋葉原ウォーカブルビジョンの全体方針の推進に期待したいです。
「ウォーカブルプロジェクト」秋葉原ウォーカブルビジョン（本編）P.41-42
さらに、潜在力が高いパブリックスペースから具体的に対象地を指定し、その対象地に導入するウォーカブルプロジェクトを選出したリーディングプロジェクトを９つ示しました。
リーディングプロジェクトでは、それぞれの対象地に方針を持たせており、実装可能性が高いウォーカブルプロジェクトを選出し、平面図を用いて具体案を示しています。
各対象地ごとの推進チームがリーディングプロジェクトを一つの指標として位置づけながら、具体的な実行につなげていくことを期待しています。
「リーディングプロジェクト」秋葉原ウォーカブルビジョン（本編）P.47-48
秋葉原ウォーカブルビジョンの期待
秋葉原ウォーカブルビジョンは、「アキバに出会う、アキバと歩む。」という全体方針のもと、変化を続けるまちに寄り添いながら、その魅力と可能性を引き出すための第一歩となる指針であり、戦略です。
このビジョンを起点に、地域の多様な声や活動を取り込みながら、誰もが安心して歩き、滞在し、回遊し、交流できる秋葉原の未来を形づくっていきます。
最後に、秋葉原TMOからいただいたコメントをご紹介します。
秋葉原タウンマネジメント株式会社は都市基盤事業を背景に誕生した「まちづくり会社」です。株主は千代田区のほか地域の事業者と関係者で構成されていますが、得た収益は株主配当ではなく「まちづくりに還元」することから「地域の公器」を理念に活動を行っています。
秋葉原地区は、長い歴史の中で交通の要衝として「電気のまち」から「サブカルの聖地」と姿を変えつつ地層のように蓄積されています。そんな秋葉原には買い物だけでなく体験や観光に多くの人で賑わうようになりました。一方、「賑わい」は時にオーバーツーリズムとなり地域のQOLに影響を及ぼし秋葉原でも課題の顕在化とともにまちの魅力が低下しつつあります。
秋葉原ウォーカブルビジョンは、居心地の良い空間の創出だけでなく課題解決に向けた指針と位置付けています。
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